研究概要 |
本研究は、スペクトラム拡散技術を用いることによる、SSBL方式音響測位の精度向上、機能の拡充を目的としている。 本年度は主に、シミュレーション及び水槽実験により、実海域においてスペクトラム拡散技術を用いて測位パルスとともに情報をやりとりできるための条件を検討し、実海域での実験で実証した。 シミュレーションでは、ドップラーシフト等による周波数ずれ、マルチパスの影響及びノイズにより、測位パルスに歪みが生じる場合を考慮して、実海域において音波でのスペクトラム拡散技術による情報の授受が可能となる条件を検討し、M系列を拡散コードとした場合のコード長を31とするのが多くの場合において適切であることなどがわかった。また、必要となるS/N比や、測位パルスの受波角の計測精度など、基本事項の調査、検討も行った。 また、海洋研究開発機構所有の研究船「かいよう」において実海域実験を行い、実証した。駿河湾内の海域において、深度約1,300mにトランスデューサを係留し、中心周波数12kHz及び14kHz、帯域幅3kHz及び4kHzに設定して実験を行った。直接拡散方式によるスペクトラム拡散を用いたQPSK、8PSKの変調方式による情報伝送を行い、0.5〜1s程度のパルスにより50シンボル分の情報授受を行った。穏やかな海況での実験だったため、周波数ずれは小さかったが、海底反射による比較的大きなマルチパスの影響下での情報授受が可能であることが確認できた。今回作成した実験装置をベースにして、来年度も「かいよう」での実海域実験を行う予定である。 今後は、測位パルスにどのような情報を持たせ、その情報によりどのように測位値を補正するか、またどのようなオペレーションに利用できるかの検討に重点をおき、研究を進める。
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