As、Se、Cr、Mo、Sbなどが水中にある場合、液中で酸素と結び付き、排水処理が困難なSeO_4^<2->、Cr_2O_7^<2->、MoO_4^<2->、SbO_3^<3->、AsO_3^<3->といったオキソアニオンの形態をとることが知られている。 本研究では、水処理技術の一環として非晶質な水酸化鉄系化合物(以後、吸着剤)を用いた処理法を検討し、上記メタルオキソアニオン種を吸着除去する条件究明を行った。特に、数十ppmと比較的高濃度な溶液から数ppmの希薄な溶液、各元素単独、混合溶液に対する吸着特性の探索を行った。 初期濃度10mg/lの人工Se溶液に、塩化鉄を出発原料とする吸着剤を1.0g/lの濃度で投入した結果、酸性側、特にpH3において短時間にSe濃度が低下し、30分経過時には排水基準値以下となる0.047mg/lまで減少した(99.5%以上除去)。同じく、As(初期濃度10mg/l)、Cr(同100mg/l)を調べたところ、AsはpH9と中性からアルカリ領域にかけて吸着除去され、CrはSeと同じくpH3で吸着されることがわかった。 次いでSe、As、Cr、Mo、Sbを含む多成分混合溶液を用いて吸着実験を行った。各元素の初期濃度を5.0mg/l、pH7、吸着剤投入量を2.0g/lとした。Se、Asに関しては吸着剤投入後5分以内に急激に濃度低下し、Se、As、Crは排水基準値以下まで低減した。同様の実験をpH3で行ったところ、吸着剤投入後5分間でCrを除くSe、As、Sb、Moの各濃度を0.05mg/l以下に低下することができた。また、研究初年度の目標の一つとして、高濃度なSO_4^<2->を含む実際の工場排水に対して処理試験(Se濃度約1.0mg/l)を行ったところ、排水中にCaCl_2を添加し、吸着剤を100g/l加えれば、Se濃度が排水基準値(0.1mg/l)以下の0.065mg/lに減少できることがわかった。
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