本研究では、レーザープラズマ中で支配的なエネルギー輸送媒体である輻射を能動的に制御することで、均一性の高い高エネルギー密度プラズマを形成することを目的とする。この目的に向けて本年度は下記の研究成果を得た。 1)高空間・時間分解X線画像計測技術の開発 生成したプラズマ構造を正確に観測するためには、高空間分解能と高時間分解能を同時に達成するX線計測技術の開発が不可欠である。そこで、高空間分解能を有するX線半影カメラと高時間分解能を有するX線ストリークカメラを組み合わせた、X線半影ストリークカメラ法を開発した。X線ストリークカメラのダイナミックレンジの向上及び、遺伝的アルゴリズムに基づいた画像再構成手法を導入することで、時間分解能200psかつ空間分解能5μmを同時達成することに成功した。 2)高原子番号物質ドープによるダブルアブレーション構造の形成とプラズマの均一化 レーザープラズマ源であるプラスチック・ターゲットに高原子番号物質である臭素をドープし、プラズマ中での輻射エネルギー輸送量の増大と、それに伴うダブルアブレーション構造の形成を実証した。プラズマ中に形成されたダブルアブレーション構造を先に開発した高時間・空間分解X線画像計測法を用いて観測することに世界で初めて成功するとともに、ダブルアブレーション構造による不安定性の抑制と均一プラズマ生成のメカニズムを、X線画像計測技術及び軟X線分光法を用いて詳細に調べた。 3)重水素固体ターゲットプラズマの基礎流体特性の計測 本研究では、最終的に重水素固体ターゲットの均一プラズマ化を目指しているが、重水素固体ターゲットプラズマ研究は端を発したばかりであり、その基礎的な流体特性は未知である。X線画像計測技術を用いて、プラズマ中を伝搬する衝撃波速度や流体速度などの基礎データの取得に成功した。
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