昨年度に引き続き重イオンビームプローブ(HIBP)計測法を大型ヘリカル装置(LHD)で生成されるような高密度で大容積のプラズマに適用するための技術開発を行った。HIBPを高密度プラズマに適用する場合、プラズマ中でのビームの減衰が大きいため、微少電流を精度良く測定する必要がある。本研究では検出器としてマイクロチャンネルプレート(MCP)を使用することを選択し、昨年度ビームが検出できることを示した。本年度は当初の計画には無かったが、MCPの高エネルギー重イオンに対する検出効率のエネルギー依存性の評価を試みた。ビームエネルギーを実際に使用する1MeVから6MeVまで変えたが有意な差は現れなかった。このことはMCPがHIBPの検出器として適していることを示している。また今後の改良の基礎データとしてMCPによる直接計測を行った場合と、ビームを金属ターゲットに当てて発生させた二次電子をMCPで検出した場合(間接計測)の比較を行った。この結果間接計測の場合、直接計測に比べて3倍程度の信号強度の増加が見られた。ターゲットの配置やターゲット-MCP間のバイアス電圧を調整することにより、更に改善できる可能性があり、今後の研究の進展につながる結果が得られた。 もう一つの重要課題としてビームラインの健全化のための技術開発を行った。研究を進めていく上で、研究を計画した当初予想しなかったプラズマ閉じ込め装置からの漏れ磁場がビームライン素子に悪影響を及ぼすことが分かってきた。大型装置においては必然的に周囲への漏れ磁場が大きく、ビーム制御電極が作る電位分布内を磁力線が貫く。このときビーム制御電極周辺でこの磁力線に沿って電位の谷間が形成されていると、そこに電子が捕獲されて放電を引き起こしビームを制御できなくなるという問題が生じた。この問題を解決するために、(1)電位の谷間領域を出来るだけなくす、(2)谷間に捕捉された電子はExBドリフトさせることによって制御電極領域から取り除く、という方針で制御電極構造の最適化を行った。この結果500Gauss程度の漏れ磁場が存在しても、放電が起こらず安定して動作する制御電極を作成することが出来た。この結果はHIBPのように磁場が存在する領域での静電的なビーム制御系を設計する上での重要な指針を与えるものである。
|