第一壁タイルの表面に形成した薄い導体層に直接通電することで現実的な投入パワーで核融合実験装置の第一壁の表面温度を能動制御する新手法を提案している。本研究では、核融合炉の第一壁アーマ材候補であるタングステンの薄膜と絶縁層を、既存の核融合実験装置の第一壁の一部と置換できる材質上にコーティングして、その電気的、熱的特性を測定すると共に、加熱時の薄膜の健全性を確認することにより、本新手法の実現可能性を確認することを目的としている。 そのため、本年度は、既存の核融合実験装置の第一壁材料である炭素材と将来の発電炉での候補材である低放射化フェライト鋼の表面に絶縁層とタングステン層を形成するための試作を行った。低放射化フェライト鋼表面への絶縁膜およびタングステン膜の形成には、大面積に均一な薄膜が形成でき工業的な基盤を有する手法として真空プラズマ溶射(VPS)法を採用した。成膜速度などを最適化することにより、低放射化フェライト鋼試験体の表面に50μmのアルミナ層を形成し、その上に50μmおよび200μmのタングステン層を形成した。等方性黒鉛試験体の表面には絶縁膜として50μmおよび200μmの炭化珪素層を化学的気相成長(CVD)法を用いて形成した。炭化珪素層上へのタングステン膜の形成はVPS法を主案として次年度に試作を行う。 更に、既存の真空加熱脱ガス測定装置に設置可能で、タングステン層の電気抵抗および加熱特性を測定可能な通電加熱ステージの詳細設計を行い次年度の製作および実験の準備を整えた。
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