研究概要 |
本研究の目的は2つあり、1)光学的禁制スペクトル線を用いてトカマクプラズマにおける高Z不純物(原子番号が大きい不純物)の蓄積量を計測すること、および2)1)を遂行するために必要な基礎データの生産である。 1)について、A.アルゴンイオンの密度測定とB.タングステンイオンの密度測定を試みた。 A:9価電離状態のアルゴンイオン(Ar^<9+>)の基底状態間の遷移に伴うスペクトル線(Ar X 2p^5 ^2P_<3/2> -2p^5 ^2P_<1/2>)をトロイダル磁場に平行および垂直な偏光成分に分離して同時に計測することに成功した。その偏光の方向からこのスペクトル線は光学的禁制スペクトル線の一種である磁気双極子放射によるスペクトル線であることが確認された。その発光弾度を解析するため基底準位間の遷移強度、寿命などの原子データを計算し、それを用いたモデルを構築した。このモデルで計算されたこのスペクトル線の発光率と計測されたスペクトル線強度から、Ar^<9+>密度を求めた。その密度は不純物輸送コードを用いて計算されたAr^<9+>密度と約2倍の誤差で一致し、本手法の有用性が示された。 B:上記Ar^<9+>と同様の手法でW^<52+>の基底状態間の遷移に伴うスペクトル線(W XXXXXIII 3d^3_<3/2>3d_<5/2>,J=2-3)の測定を試みた。構築したモデルによる計算では、電子密度に対するW^<52+>の密度が0.1%以上であれば、このスペクトル線は計測可能である。しかし、今年度までに行った実験ではプラズマの温度が低かったためタングステンの電離が進まずW^<52+>の密度が低かった。そのため、このスペクトル線は観測されず、タングステンイオンの密度計測には成功しなかった。しかし、Ar^<9+>でこの手法の有用性が示されたように、次期核融合装置などさらに高温プラズマではこの手法によるタングステン密度計測は有用な手法であると期待される。
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