研究概要 |
本年度は、既存の照射誘起偏析・内部組織発達挙動計算コードの改良と並列化を行い、種々の照射条件・材料における粒界近傍でのミクロ組成変化と内部組織発達に伴う機械的特性予測を中心とした解析を行った。特に,結晶粒界の原子構造と照射誘起偏析現象との相関を明らかとするため,機構論的モンテカルロ法に基づく計算コードも作成し,粒界近傍に存在する点欠陥と粒界面との相互作用について詳細な検討を行った。機構論的モンテカルロ法より,結晶粒界において余剰原子体積を有する領域が点欠陥と強く相互作用し,結果として照射誘起偏析を生じさせることが分かった。さらに,これらの知見を照射誘起偏析・内部組織発達挙動計算コードへと反映させた。これより得られた計算結果に関しては一部データベース化し,同時に、粒界クラック先端部における水質評価と合金元素溶出および酸化皮膜成長に伴う界面構造変化に対する基礎モデルの構築にも注力した。特に,酸化皮膜の成長等に基づく界面移動現象に関しては,Phase-field法に基づくモデル化を行っており,単純な一次元問題に関しては酸化皮膜成長過程を追従可能であることが示唆された。今後更に,二次元,三次元へのモデルの拡張を行い,前述の粒界近傍濃度分布データベースを下に,照射下での酸化皮膜成長・破壊に基づく亀裂進展過程のシミュレーションを行う予定である。また,本モデル化手法の妥当性と最新の動向を調査する目的で,東北大学,東京大学等において関連研究者と十分な議論を行い,本研究におけるモデル化手法の優位性と問題点などについて多大な御指摘を頂いた。
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