研究概要 |
本研究の目的は、大環状化合物をもちいた化学交換反応系におけるウランの同位体効果を明らかにし、その分離能を評価するものである。 大環状化合物の代表的な化合物であるクラウンエーテルを用いた溶媒抽出法を試行した。抽出剤としては、ジシクロヘキサノ-18-クラウン-6(DC18C6)というクラウンエーテルを用いた。有機溶媒としては1,2ジクロロエタンを用いた。0,1MのDC18C6溶液を調製し、有機相とした。水相としてはウラン(VI)を溶解した硝酸系の水溶液を調製した。硝酸ウラニル6水和物、UO_2(NO_3)_2・6H_2O、を硝酸カルシウム8水和物、Ca(NO_3)_2・8H_2O、に溶解し、この溶液(0.0048M)を水相として用いた。この系は水の活量が非常に小さな系である。 有機相と水相をガラス製の遠沈管に分取し、攪絆子を入れて栓をし、70℃のウォーターバス中において、抽出平衡に達するまで攪拝した(2時間)。抽出されたウランを0.01Mの硝酸にて逆抽出(ストリッピング)した。回収されたウランの濃度を、過塩素酸、塩酸ヒドラジン共存下で発色試薬アルセナゾIIIを用いて定量した。この吸光分光法にて決定された分配比は、D=0.91であった。 回収されたウランは塩酸系にて陰イオン交換カラムを通し、共存するカルシウムを除去した。またこの作業によって、有機物の不純物(クラウンエーテルの分解したものなど)も除去される。 有機相に抽出されたウランと原液のウランの同位体比を質量分析計にて分析し、それらの同位体比(および分配比)から同位体分離係数を計算した。同位体分離係数は、1.00206±0.00090となった(誤差は質量分析の2SD)。この値は、重元素における化学同位体効果としては比較的大きな値であり、本実験系の同位体分離能が高いことが示唆される。
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