ナノメーターオーダーのパターンの作製過程においては、量子ビームのエネルギー付与過程から、イオン化で生成した電子の熱化過程、熱化直後の電子の反応等のフェムト秒・ピコ秒領域で起こる高速反応がレジスト解像度、感度に密接に関係していることが示されている。そのため、極限プロセス技術を確立するためには、レジストへの量子ビームのエネルギー付与過程かち現像過程までの反応機構を詳細に解明することが必要不可欠になっている。ナノテクノロジーという観点から最も注目されるレジストプロセスの解像度は主に露光装置側の問題と材料側の問題に分けることができる。しかし、電子ビームは0.1nm以下に収束させられることが示されており、一般的にも直径2nm以下の電子ビームが利用可能になっている。従って、量子ビームリソグラフィの場合はプロセスの解像度は主に材料側の問題であると考えることができる。 平成17年度はレジスト内で量子ビームによって生成される酸の生成機構の詳細をパルスラジオリシス法により解明し、モデル化を行った。電子ビームの軌道をモンテカルロ法により計算し、ナノ加工材料中に生成する酸のプロトン及びカウンターアニオンのナノ空間分布を明らかにした。その結果、プロトンとカウンターアニオンでは照射直後の初期分布に大きな違いがあり、プロトンよりもアニオンの方が不均一に生成されることが分かった。アニオンの不均一分布は、ナノ加工におけるパターンの表面ラフネスの原因になっていると考えられる。
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