始原生殖細胞(PGC)におけるX染色体の再活性化をXist RNAを可視化し、PGCにおける再プログラム化の指標として用いることを目標とした研究を行っている。X染色体活性変化はタンパク質をコードしないXist RNAに支配されており、配列特異的RNA結合タンパク質MS2を用いて生きた細胞内におけるXist RNAの可視化を試みている。これまでにX染色体不活性化中心を含むBACのXist遺伝子へMS2認識配列の導入に成功、さらにノックインマウス作製のBAC改変とコンストラクト作成を行っている。また、MS2タンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質を全身的に発現する遺伝子導入マウスを作成し、現在その発現を確認している。 一方、Oct4遺伝子のプロモータによりPGCでGFPを発現するTgマウスを用い、11、12、13日目の3ステージの胚から、GFPの蛍光を指標にPGCを回収、マイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイの解析はES細胞を対象として用い、ES細胞を分化させて得られたPGC様細胞や、胚性生殖細胞(EG)細胞も用い、近年注目されている幹細胞と、PGCの比較を行った。雄由来のEG細胞はES細胞と非常によく似た遺伝子発現プロファイルを示し、由来となったPGCとは大きく違っていることが分かり、EG細胞の樹立の過程で大規模な遺伝子発現の変化が起きていることが分かった。一方、PGC様細胞はちょうどEG細胞と胚由来のPGCの中間的な発現様式を示し、細胞分化によりPGCの形質に近い状態に分化しているが、不完全であることが分かった。 現在、マイクロアレイの結果のクラスタリング解析を行っており、PGC発生過程において重要な発現をする遺伝子の同定を試みている。X染色体再活性化を可視化する結果とあわせて詳細なステージングによりPGCにおけるゲノム再プログラム化を担う遺伝子群の同定ができると考えている。
|