研究課題
都市環境における樹木の乾燥ストレス耐性機構を解明するために、光合成に関する基礎データの収集を行った。1)日本に生育する樹木の生活型は落葉型と常緑型とに大別される。落葉型を代表する樹木としてカエデとヤナギ、常緑型を代表する樹木としてツバキを選定した。また、樹木と比較するために1年生の草本であるヒマワリとインゲンもあわせて選定した。2)自然光を利用した温室あるいはグロースチャンバを使用し、選定した樹木および1年生草本を、葉が成熟するまで栽培した。3)葉の光合成能力を把握するために、二酸化炭素濃度に対する光合成速度の反応曲線(A-Ci曲線)を測定した。さらに、葉の内部での二酸化炭素に対する拡散抵抗が光合成速度をどの程度制限しているかを推定するため、自作した測定装置で拡散抵抗の実測を行った。上記の実験の結果、次のような成果が得られた。1)樹木は1年生草本と比べて光合成能力が非常に低いが、1年生草本と異なり大気中の二酸化炭素量が増加しても光合成速度がなかなか飽和しないことが分かった。2)上記の理由として、樹木は気孔抵抗および葉の内部での拡散抵抗が大きいため、光合成が行われている葉緑体内部で二酸化炭素分圧が大気に比べて大幅に低下していることが考えられた。3)気孔抵抗および拡散抵抗が大きいことは光合成速度を低下させる一方、葉からの水分損失を減少させる役割も果たしており、結果として乾燥ストレス耐性を高めていることが示唆された。
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Plant, Cell, & Environment 27
ページ: 413-421
Plant Cell Physiology 45
ページ: 521-529