研究概要 |
(1)海外作業 カンボジア、コンポントム州のメコン川西岸森林地帯に設定した調査地(常緑林・常落混交林・落葉林・湿地林)における定期調査を継続した。 A)林冠木フェノロジー(月3回):目視観察・林冠写真撮影・リター回収を行った。リターにより林冠木・(常緑林:Dipterocarpus costatus, Anisoptera costata、常落混交林:D.intricatus、落葉林:D.obtusifolius、湿地林:Myristica iners)の落葉フェノロジーを定量的に把握した。フタバガキ科に関しては、落下芽鱗量を指標として、展葉量も推定した。 B)土壌水分:ウイジン製簡易土壌水分計を用いて、30cmと100cmの各深度で連続測定した。 (2)国内作業 A)気象データの解析:調査地の土壌水分データ、植生データおよび調査地近辺の温度・降水量データを入手し、落葉フェノロジーとの関係を解析した。 B)衛星データの解析:衛星ALOSの打ち上げが研究計画書作成時の予定より遅れたため、現地調査と時期を同一にする衛星データの解析には至っていない。代替データとしてJERS-SARの解析を開始した。 (3)結果 常緑林の落葉ピークは11月中旬と4月中旬に2回認められた。これは土壌水分の減少および増加(降雨)と同調していた。常落混交林と落葉林の落葉ピークは不明瞭で10月下旬から4月下旬まで順次的な落葉が認められた。湿地林では最乾期に落葉が認められた。 最乾季の土壌水分は落葉林、常落混交林、常緑林、湿地林の順で乾燥していた。落葉林・常緑林の土壌水分は12月まではほぼ同じレベルで漸減したが、1月に落葉林で大幅に減少、2月には常緑林でも減少して、2-4月に最低のまま推移した。湿地林は乾季中も高い土壌水分を示した。 林冠木の展葉は落葉とほぼ同時期に起こった。土壌水分の乾燥頻度に伴い、展葉パターンは一斉型(常緑林)と順次型(落葉林)の双方が認められた。
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