翻訳伸長段階の制御を検索するための方法として、翻訳の伸長が途中で停止することによってリボソームが5'側に偏在するようなmRNAを検索する方法の開発を試みた。そのために、ポリソームをマイクロコッカルヌクレアーゼで部分消化し、そのあとショ糖密度勾配遠心分離を行うことによってリボソームのmRNA上の偏在を検出することを計画した。しかし、翻訳伸長停止によってリボソームが偏在することが示されているシロイヌナズナのシスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)mRNAにおいても、上述のような方法で顕著なリボソームの偏在は検出されなかった。したがって、この方法で翻訳伸長が途中で停止したmRNAを検索することは困難であると考えられたため、別の方法として翻訳停止したリボソームと翻訳伸長中のリボソームの翻訳阻害剤に対する感受性の違いを利用する方法を考えた。そのための予備実験として、CGSmRNA上で翻訳停止したリボソームの様々な翻訳伸長阻害剤に対する感受性を調べた。その結果、通常ではピューロマイシン処理後5分以内に大部分のポリペプチドがリボソームから解離するのに対し、CGS mRNA上で翻訳停止したリボソームではピューロマイシン処理30分後も半分近いポリペプチドが解離せずに残った。このようなピューロマイシンに対する感受性の違いを利用して、翻訳伸長停止を起こしたmRNAの検索を進めている。 また、原核生物では5'リーダー配列に存在する小さなORFで翻訳伸長が停止し、それによって下流のORFの翻訳が制御される例が知られている。そこで、シロイヌナズナにおいて5'リーダー配列に小さなORFを持つ遺伝子を検索した。その結果、210個の遺伝子を同定し、そのうちのS-アデノシルメチオニン脱炭酸化酵素遺伝子において5'リーダー配列のORFの存在によって下流ORFの発現抑制がみられた。
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