研究課題
葉緑体は原始真核生物への原始原核光合成細菌の細胞内共生によって生じたと考えられている。そのため、宿主である原始真核生物は原始原核光合成細菌の分裂を制御するために、共生後に新たな制御機構を発達させたと考えられる。この制御機構解明を目的として、我々はシロイヌナズナの葉緑体分裂因子ARC3の相互作用因子の解析を行った。酵母Two-hybrid systemでARC3との相互作用因子のスクリーニングを行ったところ、ARC3自身が相互作用因子としてあがった。さらに詳しくARC3タンパク質の相互作用領域を解析したところ、全長724アミノ酸からなるARC3タンパク質の500アミノ酸から600アミノ酸の領域と601アミノ酸から742アミノ酸の領域がそれぞれ相互作用領域である事が示された。これはARC3が生体内でホモダイマーあるいはポリマーを形成している事を示唆していた。また、酵母Two-hybrid systemでのスクリーニングからいくつかのGTP-binding Proteinがその候補としてあがった。現在これについては詳細な解析を行っている。これまでの我々の研究から、生体内ではARC3タンパク質は葉緑体外包膜に結合して存在している事が示されている。そこでARC3タンパク質と膜成分である脂質との結合をin vitroで調べたところ、ARC3タンパク質はフォスファチジルエタノールアミン(PE)と特異的に結合する事が示され、その結合はARC3タンパク質の420アミノ酸から500アミノ酸の領域が関与している事が示唆された。真核生物・原核生物の一部ではその細胞分裂時に分裂面にPEが特異的に局在する事が報告されており、葉緑体の分裂面にPEが特異的に存在するのかをPE特異的マーカーを用いて調べたところ、葉緑体でも分裂面にPEが特異的に存在する事が示された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Plant Mol.Biol. 59
ページ: 631-645