研究概要 |
(1)タンパク質Tyr硫酸化酵素(TPST)はすでに動物ではクローニングされているが,そのオルソログは植物には見出されない.したがって植物独自のTPSTがPSKの硫酸化に関与していると考えられる.PSK前駆体ポリペプチド中のTyr硫酸化モチーフを同定するため,リコンビナントPSK前駆体を基質としたin vitro硫酸化アッセイ系を確立し,PSK前駆体中において保存性の高いアミノ酸群についてアラニンスキャンを行なった.その結果,Tyr残基直前のAspに加えて、10アミノ酸以上上流に存在する2個のCysと酸性アミノ酸群がTyr硫酸化に重要であることが明らかとなった.この結果は動物TPSTに比較して,植物TPSTはより広範囲のアミノ酸残基を認識していることを示唆する(投稿準備中).植物TPSTの同定を目指して,TPST認識配列周辺を固定化したアフィニティーカラムを作製し,可溶化ミクロソーム画分からの精製を行なったが,特異的な吸着は見られなかった.架橋方法などにさらなる検討が必要である. (2)リン酸化タンパク質の研究では,IMACに代表されるリン酸化ペプチド特異的濃縮法の開発が,研究の発展の基礎となった.しかし,硫酸化ペプチドの特異的濃縮法は確立されていない.硫酸基はイオン半径が大きく水和されにくい性質を持つため,陰イオン交換担体に極めて強い親和性を示す.この性質を用いて,タンパク質をトリプシン分解し,さらにcarboxypeptidase B処理により塩基性アミノ酸を除去したペプチド断片から,硫酸化ペプチドのみを選択的に精製する手法を新たに確立した(投稿中).この手法により未知の硫酸化タンパク質の同定を試みている. (3)硫酸化反応における硫酸基のドナーであるPAPSの合成酵素adenosine-phosphosulfate Kinase(APK)の機能解析を目指して,4種類存在するパラログすべての遺伝子破壊株を取得し,掛け合わせを行なっている.
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