ラン藻Synechococcus elongatus strain PCC7942のゲノムにランダムに薬剤耐性遺伝子を挿入する方法で、硝酸同化に関わる変異株を取得し、この変異株を解析した。その結果、新規遺伝子(narM)が硝酸還元過程に必須であることが示された。narMは、161アミノ酸残基からなる親水性タンパク質をコードしており、恒常的に低レベルで発現していた。narM遺伝子は、硝酸同化能を持つラン藻にのみ保存されており、多くの場合硝酸還元酵素の構造遺伝子(narB)の下流に位置していることより、硝酸還元酵素と機能的に関わりがあると推定された。しかしNarMは、ラン藻の硝酸還元酵素の構成成分ではなく、またnarBの転写制御因子でもなかったことから、NarMは硝酸還元酵素の補欠分子族の合成あるいはNarBポリペプチドと補欠分子族とのアッセンブリーに関わっていることが推察された。そこで、保存されている3つのCys残基をそれぞれSer残基に置換したNarMをnarMを欠失させたラン藻細胞内で発現させたところ、21番目のCys残基を置換したものだけが機能が失われており、21番目のCys残基がNarMの機能に重要であることが示され、補欠分氏族とのアッセンブリーに関わっている可能性が示唆された。つぎにラン藻細胞内で別々に発現させたNarBポリペプチド、NarM、モリブデン補助因子を試験管内で混合し、活性型の硝酸還元酵素の検出を試みたが、有為な活性は検出できなかった。
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