研究概要 |
植物のゴルジ体において観察されるユニークな形態や活発な運動はいかなる機能を反映しているのか,という問題を分子遺伝学的アプローチにより解明するため,本年度はその基礎的な準備を進めるとともに,変異体の選抜を行った.まず,ゴルジ体のシス領域に局在することが知られるAtErd2と緑色蛍光タンパク質の融合タンパク質を発現する形質転換植物の変異原処理をおこなった.この植物では,生きた細胞におけるゴルジ体の動態を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察することが可能であり,変異原処理した植物においてゴルジ体の形態や動きを直接観察することにより,それらが異常となった変異体が単離できるものと期待される.これまでに数百系統の変異原処理シロイヌナズナのスクリーニングが終了しており,現在までにゴルジ形態に異常を示す2変異体の単離に成功している.現在,これらの変異が後代に遺伝するか,それらが単一の変異により引き起こされた表現型であるのか,等について基礎的な解析を行っている.これと並行し,シス領域以外のゴルジ体サブ領域を可視化した形質転換シロイヌナズナの作製も試みた.現在,ゴルジ体トランス領域に局在するsialyl transferase,トランスゴルジネットワークに局在するAtTlg2a/Syp41等にmRFPやVenus(改変型YFP)を融合したタンパク質を発現するシロイヌナズナを作製中である.変異体中におけるこれらのマーカーの動態を観察することにより,単離された変異体の表現型がシス領域特異的なものか,もしくは全ゴルジ領域に及ぶものか等について明らかにできるものと期待している.
|