研究課題
本研究では近年発見した新規青色光受容体BLUFタンパク質の光反応機構の解明を目標に研究を進めてきた。昨年度までの研究で、1)紅色細菌のBLUFタンパク質AppAとラン色細菌のBLUFタンパク質Slr1694はともに発色団としてフラビンを結合しており、その吸収スペクトルは光照射により10nm程長波長シフトすること、2)その際フラビンC4=0のカルボニル基に新たな水素結合が形成されることを、主にFTIR法を駆使し示してきた。本年度はAppAのBLUFドメインの結晶構造を決定するとともに大腸菌のBLUFタンパク質YcgFの解析も同時に行なった。その結果以下のことを明らかにした。1)ラマン分光法によりAppAのBLUFドメインは光照射によりフラビンとアポタンパク質との相互作用変化を引き起こしていることを明らかにした。それらは昨年度までのFTIRの結果を支持するものであった。2)AppAのBLUFドメインの結晶構造から、フラビン環C4=0のカルボニル酸素はY21,Q63,W104と水素結合ネットワークを形成していることがわかった。それぞれのアミノ酸に部位特異的置換を施したところ、Y21とQ63は光反応に必須であり、W104はその後引き起こされるアポタンパク質の構造変化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。このことからBLUFドメインが光を受けると、Y21からの電子によりフラビンが還元され、続いてQ63の側鎖の向きが反転し、その後W104Aのコンフォメーションが変化する、という光サイクル反応のモデルを提唱することができた。3)大腸菌のBLUFタンパク質YcgFの全長およびBLUFドメインを精製し、それぞれの光反応に伴う構造変化をFTIR法により解析した。その結果、N末端のBLUFドメインの構造変化が引き金となり、C末端のドメインの構造変化が引き起こされることを明らかにした。
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