1.ドーパミン水酸化酵素類似遺伝子moxd1産物(Mox)について、マウス乳腺の各発達段階における発現を調べたところ、Moxは腺房上皮で恒常的に発現しているらしいことがわかった。2.HC11細胞においてRNAiによるMoxの発現を抑制したが、顕著な表現型の変化は認められていない。一方、Moxを薬剤誘導的に発現するCHO細胞系を作製したところ、過度のMox発現は細胞死を招くらしい事がわかった。3.セロトニンは乳腺細胞内で小胞に局在している事がわかった。一部の乳腺細胞株では、セロトニン合成阻害剤が細胞機能に重大な影響を及ぼすこと、また、この機能が既知のセロトニン受容体の阻害剤では再現できないことから、これらの細胞では、既知の受容体に依らないセロトニンの「細胞内機能」が存在することが示唆された。しかし、それがセロトニン化によるものかどうかはまだわからない。4.ヒスタミン合成酵素(HDC)が乳腺でも発現していることが確認された。その量は比較的少なく、乳腺局所でのヒスタミンの泌乳修飾作用は限定的なものであると思われる。一方で、HDC欠損雌マウスには著しい泌乳障害が認められ、これには中枢ヒスタミンの欠乏が関与している可能性が示唆された。5.乳汁含有成分のひとつであるエストロゲンの、仔の成長に対する影響を調べた。その結果、過剰量のエストロゲン投与が膣の正常な発生を妨げ、TFF1をはじめとする遺伝子発現を著しく変化させることがわかった。
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