真核細胞は栄養飢餓に直面したとき、自己の構成成分を分解し、再利用するオートファジーというシステムを持っている。オートファジーは、飢餓シグナルの感知と伝達、脂質二重層の二重膜からなるオルガネラであるオートファゴソームの形成、オートファゴソームのリソソーム/液胞への融合、オートファゴソームの分解という一連の過程を取ることが知られている。 これまで、遺伝学的解析のしやすい出芽酵母の系を利用して、オートファジーに欠損を示すapg(現在ではatgと改称)変異株が16種類得られている。これらの変異株では、オートファゴソーム形成が不能となり、それに伴って栄養飢餓時の生存率が低下する。 ATG遺伝子の機能解析が進められた結果、Atgタンパク質がいくつかの機能群を形成していることが明らかとなってきた。二つのユビキチン様タンパク質修飾システム、ホスファチジルイノシトール3リン酸キナーゼ複合体、タンパク質キナーゼ複合体などである。 私は蛍光顕微鏡を用いたAtg8とAtg5の解析を通じて、オートファゴソーム形成に必須な構造体、pre-autophagosomal structure (PAS)を見いだした。その後の解析から、多くのAtgタンパク質がPASへの局在を示すことが明らかとなってきた。 そこで、GFP (green fluorescent protein)融合Atgタンパク質の局在をatg遺伝子破壊株中で網羅的に解析することにより、それぞれのAtgタンパク質がどのような相互作用を介してPAS形成に関わっているかを調べた。その結果、新たにAtg2-Atg18複合体の存在を見いだした。また、富栄養条件ではAtg11が、栄養飢餓時にはAtg17が、Atgタンパク質をPASに集積させるプラットフォームの役割を果たしていることを示した。本解析は完了し、現在論文投稿中である。 本年度は、遺伝子スクリーニングの結果、新たなATG遺伝子を同定することが大きな成果として挙げられる。
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