研究概要 |
ノルウェー・ベルゲン大学のエスペランド臨海実験所で採集を行い、Cephalothrix filiformis、 C. rufifrons, Cerebratulus fuscus, Lineus bilineatus, L. longissimus, Micrura fasciolata, M. purpurea Nipponnemertes pulchra, Oerstedia dorsalis, Tetrastemma candidum, T. vermiculum, Tubulanus annulatusの12種を得た。分子系統解析によって推定した系統樹に形態形質をマップさせることにより、従来用いられていた高次分類群の判別形質を再評価した。その結果、単針類において吻鞘壁が内縦走筋層・外環状筋層の2層からなる群は更に2群に分けられ、それは背血管が吻鞘壁に進入するかどうかという形質がこの2群の判別形質として重要であることが示唆された。背血管が吻鞘壁に進入しない群に含まれる最古参の名義科階級群名はOerstediidaeのようである。この知見に基づき、北西太平洋産種の分類学的再検討を行った。そのうちの1種cf. Diplomma serpentinaは1855年に沖縄から原記載されて以降これまで1例も報告がなく、ながらくその分類学的同一性は不明のままであった。本種と同定可能な多数のトポタイプ標本、および本州の3地点(神奈川県三崎、静岡県下田、和歌山県白浜)とフィリピンの1地点(パナイ島ティグバウアン)から得られた標本に基づいて、分子系統解析・比較形態学的研究を行った結果、本属種はOerstedia属を含むクレードの一員であり、さらに背血管が吻鞘壁に進入しないため、Oerstediidaeに所属させるのが妥当であるという結論を得ている。
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