研究課題
菌寄生植物(腐生植物)は、生存に必要な全ての炭素源を菌類からの供給でまかなう、菌類に寄生している状態の生活様式をもつ従属栄養植物群である。菌寄生植物の進化は、菌類とのパートナーシップの変化をともなっていることが指摘されている。本研究ではその進化過程を詳細に追跡するために、菌寄生種に近縁の光合成種を用いて、菌寄生に至る前段階として最も重要な、菌類との相互作用の変化が具体的にどのように生じるのかについての詳細な解析を行うことを目的としている。光合成種と菌寄生種のパートナーとなっている菌の両方を共存させている、ラン科キンラン属のササバギンランを用い、これらの根に共存している菌を根の各所からとりだして寒天培地上で培養した。培養した菌類について、ミトコンドリアDNAのlrRNA遺伝子および核DNAのITS領域の塩基配列を用いた分子同定を行った。その結果根に共存している菌類は、個体内では季節を通じて同一の種類が安定して生息していた。しかし個体間では菌類相が大きく異なり、一般的なラン菌(Rhizoctonia spp.)を持つ個体と、イボタケ科、ベニタケ科などの外生菌根菌を持つ個体とに大きく二分された。一般的なラン科植物の生育にラン菌が重要な役割を果たしていることを考えると、外生菌根菌を持つ個体でも、これらの菌はその個体に対して、ラン菌と同等の生態的役割を果たしていることが推測される。なぜ個体間で保有している菌相に違いが出るのかについては現時点では不明だが、きわめて興味深い現象である。
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Journal of Plant Research (in press)
Journal of Japanese Botany 79
ページ: 358-369