研究概要 |
スイレン目のうち、日本に広く分布するスイレン科コオホネ属、およびハゴロモモ科ハゴロモモ属のハゴロモモについて、花の匂いの捕集・分析を行った.コウホネに関しては京都府、滋賀県、岐阜県の自生地または栽培品を用いて、花の匂いの捕集を行った.それぞれの自生地から、開花一日目(雌性期)、二日目(中間期)、三日目(雄性期)と思われる個体(花)を採集し、別々に匂いの捕集を行った.コウホネ属のうち、外部形態からコウホネとヒメコウホネと同定した(実際には雑種が形成されていることが最近明らかになったので、分子マーカーによる確認が必要)花の匂いをヘッドスペース法で捕集し(1花/1サンプル)、ガスクロマトグラフィー・質量分析器で分析を行った.コウホネとヒメコウホネで、花の匂いの化学組成の質的な違いはほとんどなく、量的には花が大きいコウホネがより多くの花の匂い物質を放出していた,また、開花一日目、二日目、三日目で質的な違いはほとんど見られなかったが、量的には一日目が最も多く、次第に減少していくことが明らかになった.花の匂い物質としては、炭化水素が多く、そのほか、テルペン系化合物、ベンゼン系化合物が見られた.具体的には、ウンデカン、トリデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデセン、ヘプタデセンなどの炭化水素やリモネン、リラックアルデヒド類、カリオフィレンなどのテルペン系化合物、ベンジルアルコールや1,4-ジメトキシベンゼンなどのベンゼン系化合物がコウホネ類の花の匂いの主要物質として同定された.ハゴロモモ属のハゴロモモは花が小さいため、できるだけ多くの花を集めて匂いを捕集したが、はっきりとした結果は得られなかった(ノイズとの区別ができない).これについては来年度さらに工夫をして解析する予定である.
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