無尾両生類におけるmtゲノムの分子進化のプロセスを推定すると共に、ゲノム構造を指標として高次分類群の系統関係を明らかにすることを目的に研究を実施した。 本年度は、昨年決定したmtDNAの全塩基配列情報から、19種類の縮重プライマーを作成した。プライマーは、mtDNAの全領域を10-15程度の領域(1〜5kbp)、に分けて増幅できる様にデザインした。本プライマーを用い、無尾類6科(クサガエル・サエズリガエル・スキアシヒメガエル・アベコベガエル・ヤドクガエル・ユビナガガエル)について、LA-PCRを行った所、全科においてmtDNAほぼ全領域の増幅が確認できた。なお、本プライマーの特筆すべき点として、nested-PCRを必要としないことが挙げられる。また、上記のPCRフラグメントから、後者4科の遺伝子配置は、他の無尾類と同じか、変化していたとしてもごく僅かであると考えられた。しかし、クサガエル科のマダラクサガエルでは、ND1からCO1蛋白遺伝子までの領域が3kbp程長くなっており、さらに、本領域において、tRNA-AsnとtRNA-Alaの位置が置き換わっていることが分かった。また、サエズリガエル科のケガエルでは、ND4からCytb蛋白遺伝子までの領域が通常より4kbp程長くなっていた。現時点では、本領域の伸張はND5遺伝子の重複によるものと推測される。今後は、クサガエル科・サエズリガエル科の種で見られた特徴的なゲノム構造は、(1)複数の科に渡ってみられる、(2)科内のみで共通する、(3)それぞれの科の一部の種だけに見られる特徴、のいずれに当たるのか明らかにする必要がある。 さらに、本年度は、昨年度の成果のうち、アオガエル科・シュレーゲルアオガエルの論文を公表し、マダガスカルガエル科のハイレグアデガエルのmtDNAについて、国際爬虫両生類学会で発表を行い、論文を公表した。
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