研究課題
哺乳類の系統関係について、従来の比較形態学からは思いもかけなかったような新しい説が近年分子系統学によって次々と提唱されている。そのうち最も有名になったのはクジラが系統的には偶蹄類の内部系統に位置し、カバと最も近縁だということである。しかし、クジラ類についてまだ多くの解明すべき問題が残っている。例えば歯クジラとヒゲクジラの関係やカワイルカは単系統であるか或いは多系統であるかなどである。後者の問題の解明については、カワイルカのサンプルの入手が必須である。現在野生の揚子江カワイルカは中国にのみ生息するが、すでに数十頭までに減少しており、絶滅の危機に迫られているのが現状である。本研究では、その貴重な揚子江カワイルカの全ミトコンドリアDNAの塩基配列を決定し、アマゾンカワイルカ、ラプラタカワイルカ、ガンジスカワイルカなどのミトコンドリアDNA配列データも含め、クジラ目に置けるカワイルカの系統的位置、および他のクジラから分岐した年代を推定した。カワイルカの系統的位置の推定においては、最適なトポロジー探索をベイズのMCMC法活用により、より有効で実現的なトポロジー探索法を試みた。扱ったミトコンドリア・ゲノムデータに関しては、最尤法における塩基モデル、アミノ酸モデル、codonモデルをそれぞれについて解析し、それらの解析結果を比較した。分岐年代推定については、複数の化石証拠によるcalibrationを取り入れ、生物種によって異なる進化速度も考慮した解析法で行った。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Systematic Biologists 54・1
ページ: 1-14
BioSystems (in press)