研究概要 |
近年、酸化損傷を受けた2ヒドロキシアデニン(2-OH-A)が8オキソグアニンに加え変異原となることが、in vitro, in vivoの実験から明らかになってきおり、これら酸化損傷ヌクレオチドが間違った塩基対を形成することで突然変異を引き起こし、細胞のがん化の原因となると考えられている。また細胞死を引き起こすことで、脳、神経変性疾患など多くの変性疾患の原因になると考えられている。本研究は2-OH-Aを初めとしたこれら酸化損傷を認識し除去する酵素群の構造解析とその分子認識機構の解明を目的としている。本年度は、8-oxo-dGTPと2-OH-dATP両者を特異的に認識し、モノリン酸体に加水分解することでゲノムDNA中への取り込みを防いでいる酵素であるヒトMTH1の立体構造をNMRを用いて決定した。NMRと同位体標識した水を用いて、加水分解反応を追跡し、この酵素反応において水分子がベータ位のリン酸基を攻撃することを明らかにした。また決定した立体構造に基づいて8-oxo-dGTPと2-OH-dATPの基質結合モデルを作成した。大腸菌において2-OH-dATPを高い特異性で分解することが明らかなっている酵素Orf135に関しては、多次元NMR法を用い信号の帰属を終了し、NOEなど構造情報の収集と構造計算の段階まで研究を進めた。平行してMutTとMTH1の立体構造に基づきOrf135の立体構造を予測し、E33、D118に関する変異体を作成し酵素活性を測定したところ、これらの残基が2-OH-A認識に重要であることが明らかになった。
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