研究概要 |
糸状菌Mortierella vinaceaが生産する2種類のα-ガラクトシダーゼ(αGal-I、αGal-II)のうち、ガラクトマンナンなどの基質の末端ガラクトースにのみ作用し、そのGalα1,6Manグリコシド結合を切断するα-ガラクトシダーゼI(αGal-I)のX線結晶構造解析に成功した。構造解析は、高エネルギー物理学研究所放射光施設で得られた空間群P4に属する結晶の1.6Å分解能のNativeデータを利用し、イネα-ガラクトシダーゼの結晶構造を用いた分子置換法により行った。αGal-Iは、糖分解酵素ファミリー27に分類されるが、これまでに構造が解かれている同ファミリーに属するイネ、ヒトなどのα-ガラクトシダーゼの基本構造、即ち、N末端側にTIMバレル様の触媒ドメインを、C末端側にはβ構造の折りたたみ構造を有していた。しかしながら、他のα-ガラクトシダーゼにはない特徴として、触媒ドメインの途中に20残基ほどの小さなこぶのような小ドメインを持っており、触媒部位の近傍に位置していることが明らかになった。また、αGal-Iはいくつかのアスパラギン側鎖にN型糖鎖が付加した糖タンパク質であることが知られていたが、今回4カ所のアスパラギン側鎖に糖鎖が付加していることを明らかにした。高分解能の電位密度図から、そのうちの一つAsn155に付加した糖鎖の7つの糖成分を同定することができ、その結果、本酵素の持つ糖鎖は高マンノース型糖鎖であることも明らかにした。現在結晶学的R因子0.133の分子モデルを得ているが、さらに精密化を進めている。
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