研究概要 |
糸状菌Mortierella vinaceaが生産する2種類のα-ガラクトシダーゼ(αGal-I、αGal-II)のうち、ガラクトマンナンなどの基質の末端ガラクトースにのみ作用し、そのGalα1,6Manグリコシド結合を切断するα-ガラクトシダーゼI(αGal-I)のX線結晶構造解析の構造の精密化を進めた。既に構造解析に成功している、イネ由来のα-ガラクトシダーゼのガラクトース複合体との立体構造の比較を行った結果、触媒ドメインの途中に20残基ほどの小さなこぶのような小ドメインを持っており、触媒部位の近傍に位置していることが明らかになったため、この小ドメインがαGal-Iのユニークな基質特異性を発現していると考えられ、さらに詳細な検討を試みた。まず、イネα-ガラクトシダーゼの構造のうち、ガラクトースのモデルをαGal-Iの構造に重ね合わせ、リガンド複合体モデルを作成した。その結果、先の小ドメインは、直接ガラクトースの1位の水酸基から延びる糖鎖に影響を与える可能性は少ないことが明らかとなった。一方、本酵素は通常4量体を形成することが、ゲルろ過クロマトグラフィーの結果などから明らかになっているが、その4量体構造は本酵素の結晶が持つ4回回転軸によって形成されていることが明らかとなった。さらに、本酵素の持つN型糖鎖は全て、4量体の外側に配置され、分子間インターフェースの近傍に存在していたため、糖鎖があることによって、タンパク質4量体が安定化されている可能性が示唆された。一方、疎水性の小ドメインは4量体の一番中心部に集まってお互いに相互作用していたため、この小ドメインが4量体形成に重要な役割を担っていることが示唆された。さらに、触媒部位は4量体の外側ではなく内側に潜り込んだ場所に存在しており、本酵素の基質特異性は4量体構造を形成した結果発現されていることも示唆された。
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