研究概要 |
真核生物における細胞膜結合型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(microsomal glutathione S-transferase ; MGST)は内因性・外因性の様々な生体内異物の解毒に関与する他、脂肪の酸敗の主因である脂質ヒドロペルオキシドに対する還元作用、アラキドン酸から合成される生理活性物質であるロイコトリエンやプロスタグランジンE_2の合成を触媒する多機能な酵素である。MGSTは喘息、炎症に対する重要な薬剤ターゲットになりうるが、その詳細な分子機構については未だ明らかにされていない。本研究では、MGSTの触媒機構やMGSTに特徴的な広い基質特異性について立体構造に基づいて明らかにするため、酵素と基質あるいは基質類似体を含めた複合体の結晶を作製して、高分解能によるX線結晶構造解析を行う。研究の第一段階として、マウス由来のMGSTについて、同定されている3種類のアイソザイム(MGST-1,-2,-3)のcDNAを用いて、大腸菌による大量発現・蛋白質精製を行った。3種類全てのアイソザイムについて、ヒスチジンタグ融合蛋白質の大量発現系を構築した。広範な発現・精製条件の検討の結果、発現蛋白質を非イオン性界面活性剤の存在下で可溶化して、金属イオンアフィニティークロマトグラフィー等の使用により、高純度の蛋白質試料を調製した。現在、様々な結晶化試薬や界面活性剤を用いた広範な結晶化条件の検討を行っている。今後、さらに添加剤等のスクリーニングを加えた、詳細な結晶化条件の検討を加え、質の高い結晶の作製を目指す。
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