交付申請書に記載した研究実施計画に沿って研究を行い、下記の成果を得た。 TIEG1蛋白質の部分配列を有する抗原蛋白質を作製し、ウサギに免疫した。得られた抗血清をアフィニティー精製し、抗TIEG1抗体とした。この抗体を用いてウエスタンブロット解析した結果、TIEG1は主に核内に存在する約65kDaの蛋白質で、rat-1細胞における発現量はグルコース刺激によって急速に上昇することが判明した。TIEG1蛋白質量はグルコース投与の2時間後にピークに達し、これはTieg1 mRNAのピークから約1時間遅れていたものの、mRNAと蛋白質の発現プロファイルが互いに似ていたことから、TIEG1蛋白質の合成・分解は比較的速いと考えられた。さらに、生体内においてもTIEG1が時計入力因子として働く可能性を検証するため、マウスを2日間絶食させた後に餌を2時間与え、摂食が肝臓におけるTIEG1蛋白質量に与える効果を解析した。その結果、餌を与えた場合は絶食を続けた場合と比べ、TIEG1蛋白質量が有意に上昇することがわかった。一方、Per1およびBmal1遺伝子の発現量は摂食によって低下したことから、TIEG1は生体内においてもPer1・Bmal1遺伝子の抑制因子として時計入力に関与すると考えられた。 以上の解析と並行して、時計蛋白質E4BP4およびCRY2のリン酸化動態を解析した。ニワトリE4BP4のSer182およびマウスCRY2のSer557のリン酸化は、各蛋白質のプロテアソームを介した分解を導く。本研究では、Ser182リン酸化型のE4BP4に対する抗体を作製し、ニワトリ松果体においてSer182がリン酸化されていることを見出すとともに、Ser557リン酸化型のCRY2に対する抗体を用い、マウスの肝臓だけでなく視交叉上核においてもSer557のリン酸化量が顕著な概日リズムを示すことを明らかにした。
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