○細胞内小胞輸送に対するAMSHの過剰発現の影響 これまでにHrsの細胞内での過剰発現がレセプターの分解を阻害することが知られている。同様の現象がAMSHの過剰発現により観察されるのか、AMSH野生型と数種のドメイン欠損変異体をHEK293T細胞に導入し、TGFレセプターの存在量を指標に検討した。このなかで、AMSHの活性中心であるJAMMモチーフの欠損変異体の過剰発現によりレセプターの蓄積が観察された。また、我々はHrs過剰発現によるレセプター分解阻害がSTAMの共発現により解消されることを見出した。そこで、AMSHのHrsとの共発現について検討を行ったが、STAMと同様の効果は観察されなかった。以上のことから、AMSHの脱ユビキチン化活性がエンドサイトーシス経路でのレセプター分解が進行するために必要ではあるが、それに先んじたHrs/STAM複合体の作用が必要であると考えられた。また、Hrs過剰発現により初期エンドソームに蓄積したTGFレセプターを免疫沈降した際に、Hrs/STAM複合体に比べ、AMSHが優位に共沈した。細胞内に取り込まれたTGFレセプターは通常、初期エンドソーム上から細胞膜へとリサイクルされることからAMSHによるレセプターの脱ユビキチン化がレセプターのリサイクルに必要であることが示唆された。 ○STAMのモノユビキチン化、脱ユビキチン化に対するチロシンリン酸化の要求性 STAMにはサイトカイン刺激依存的にチロシンリン酸化を受けると考えられるITAMドメインを持ち、この領域がコイルドコイル領域と隣接することから、他の分子との相互作用とITAMドメインのチロシンリン酸化との関係は興味深い。そこで、この領域のチロシン残基の変異がSTAMのユビキチン化、及びAMSHによる脱ユビキチン化に及ぼす影響を検討した。STAMとJAK2とを共発現させたところ、野生型STAMではそのモノユビキチン化とJAK2の発現量に相関が見られたが、ITAMドメイン内チロシンの変異体はユビキチン化のレベルが低下し、JAK2発現量との相関は見られなかった。一方、AMSHによる脱ユビキチン化はこの変異の影響は観察されなかった。
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