研究概要 |
当初の研究計画:核内に新規のS1P受容体が存在するという仮説のもと、このS1P受容体を同定すること。 研究経過と成果:検討の結果、少なくともS1Pを固定したカラムを用いた古典的な方法では、S1Pが特異的に結合すると思われるタンパク質分子を核抽出液中に同定できなかった。しかし研究過程で、この研究計画を発想するきっかけとなった、SPHK2サブタイプが核内に存在することを初めて指摘した研究(J.Biol.Chem.(2003)278,46832-46839)をさらに進め、このSPHK2が細胞の状況によって細胞内の局在や発現量を大きく変え、それが細胞の生死を決定する重要な要因になっていることを見いだし、報告した(J.Biol.Chem.(2005)280,36318-36325)。 核内での脂質メディエーターの生理的機能に関しては未知の部分が多いものの、最近になって核内に存在する脂質関連酵素の重要性を指摘する論文が急増しており、まさにこれからの研究分野と言える。ゴードン会議でも今年から「Signal transduction within the nucleus」という新たなセクションが創設され、今年2月に米国カリフォルニア州で行われた初回の会合に、申請者らもシンポジストとして招聘された(Nakamura, S., and Okada, T., "Sphingosine kinase 2 is a nuclear protein and inhibits DNA synthesis")。
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