研究概要 |
CaM依存性プロテインキナーゼホスファターゼ(CaMKP)と、その核局在型CaMKP-Nは、in vitroにおいて多機能性CaMキナーゼを脱リン酸化して不活性化するが、in vivoでの機能は分かっていない。本研究ではモルフォリノオリゴを用いたアンチセンス法によるGene Knockdownにより、これら2つの酵素がゼブラフィッシュの初期発生に果たす役割を検討した。まず、抗zCaMKP抗体を作製し、ウエスタンブロッティングにてゼブラフィッシュ胚での発現を調べたところ、zCaMKPは受精後48時間以降の胚から検出された。アンチセンスモルフォリノオリゴをinjectした胚では受精後72時間で著しい奇形を生じ、これはリコンビナントラットCaMKPとのco-injectionによりレスキューされたが、ホスファターゼ活性を持たない変異体D194Aにはそのような効果は認められなかった。一方、Neuro2a細胞に一過性に発現させたzCaMKP-Nは核に局在したのに対し、C末領域のRKKRRLDVLPLRR以降を除去した変異体は細胞質全体に拡散したので、zCaMKP-Nの核移行シグナルはC末領域に存在することが示唆された。Neuro2a細胞をイオノマイシン刺激(1μM,10min)するとCaMKIVの一過的なリン酸化が観察されたが、そのリン酸化はzCaMKP-Nとの共発現により顕著に阻害された。また、Gene Knockdownによりゼブラフィッシュ胚の頭部の構造は不明瞭になり、ほとんどが孵化することが出来なかった。以上の結果はCaMKPとCaMKP-Nがin vitroだけでなく細胞内でも多機能性CaMキナーゼをダウンレギュレートし、脊椎動物の胚発生に何らかの重要な役割を果たしていることを示唆している。
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