研究概要 |
モリブデンコファクタースルフラーゼ(MCS)は,モリブドプテリン(MPT)をコファクターにもつキサンチン酸化還元酵素(XOR)およびアルデヒド酸化酵素(AO)の活性化に必要なタンパク質として遺伝子が同定された。その活性はMPTに硫黄原子を付加させることで,XORやAOを活性化することと考えられているが,その反応機構など詳細は不明である。MCSの機能を解析するため,その生化学的性質の解析に着手した。 本年度は,MCS大腸菌内発現系の構築を目指し,cDNAの全長を種々のベクターを用いて,培養条件を変えて発現させた。前年度の結果から,大量に発現させた組換え体酵素は不溶性の封入体画分に回収されたので,MCS活性の有無の検討を,XORとMCSを供発現するベクターを用いて調べた。好気的な培養条件ではXORの有意な活性化は見られず,MCSが活性を有する形で発現していないことが考えられたが,やや嫌気的な培養条件ではXORの活性上昇が見られた。MCSの基質であるMPTは嫌気状態の大腸菌内で合成されるとの報告があるため,XORを活性上昇はMPT供給量に依存することが考えられる。また,XORに正常なMPTが含まれるかどうかを解析することを目的にXORの結晶化を行い,X線による構造解析を行っており,詳細は解析中である。これとは別にXORのモリブデンコファクター(MoCo)結合部位近傍のアミノ酸残基をAOに近づける形で変えた変異型酵素を作製し,野生型酵素の解析結果と比較したところ,変異型酵素ではMoCoの挿入に差がみられた。XORとAOのMoCo近傍の構造は近似しており上記の結果は,モリブデン酵素においてMoCoが合成される過程で,MCSの活性にMCS-XORまたはMCS-AOの相互認識機構が深く関与することを示唆しており、今後この視点からさらに解析を続ける予定である。
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