2005 年度実績報告書

錐体視細胞における低い光シグナル増幅をもたらす分子メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号	16770114
研究機関	大阪大学
研究代表者	橘木修志大阪大学, 生命機能研究科, 助教授 (70324746)
キーワード	錐体視細胞 / トランスデューシン / 視物質キナーゼ / GRK / 光応答
研究概要	1.桿体・錐体におけるG蛋白質活性化反応の速度の違いに関する解析視細胞では、光を受容した光受容蛋白質が、三量体G蛋白質トランスデューシン(以下Gtと略記)を活性化することにより酵素カスケードを駆動し、受容器電位を発生させる(光応答)。脊椎動物の網膜に存在する二種類の視細胞(錐体と桿体)のうち、錐体の光に対する感度が桿体と比べて著しく低い原因として、錐体でのGtを活性化する反応の効率が桿体よりも低いことが挙げられる。この効率の低さは、錐体で発現している光受容蛋白質、あるいはGtのいずれかによってもたらされていると思われる。そこで、そのどちらが原因であるかを解析することを目的として、生化学的な解析を行った。一連の解析から、効率の低さをもたらしている原因がGtの側にあることを示唆する結果を得ることが出来た。また、一連の研究の過程で、活性型GtおよびGtの標的蛋白であるPDEを精製することに成功し、桿体型/錐体型Gtが桿体型/錐体型PDEを活性化する際の効率の違いも検討出来るようになった。今後、錐体において活性化GtがPDEを活性化する効率が低い原因が明らかに出来ると考えている。 2.錐体における活性型Gtの速やかな不活性化に関わる分子メカニズムの解析活性型になったGtは、結合したGTPをGDPに加水分解して不活性型に戻る。これまでの我々の研究から、Gtの不活性化が、錐体では非常に早くおこることを明らかにした。この現象は、錐体の応答が早く終息することに関係すると考えられる。錐体で、このような素早い不活性化が生じる原因として、錐体のGAP (GTPase activating protein)の発現量が多いことが示唆されている。この仮説を明らかにするために、抗GAP抗体を作製し、Western blotによる定量が出来るようになった。