本研究では溶液NMRを用いたGel-phaseにおける蛋白質の立体構造解析法を確立し、膜蛋白質へ応用することを目指している。具体的には、溶液NMRによるGel-phase蛋白質の構造解析法の開発、可溶性向上を目指した融合蛋白質(可溶化タグ)の選択と溶液条件下における構造解析可能性の検討、無細胞蛋白質合成系を用いた可溶化タグ付加膜蛋白質の大量調製法の検討、界面活性剤共存下でのGel-phase NMRの膜蛋白質への応用を行う。本年度の実施実績は以下の通りである。 昨年度に引き続き可溶性向上を目指した融合蛋白質(可溶化タグ)の選択と溶液条件下における構造解析可能性の検討、および、無細胞蛋白質合成系を用いた可溶化タグ付加膜蛋白質の大量調製法の検討を行った。光回避シグナルを伝える古細菌由来2回膜貫通型蛋白質pHtrIIについて加茂直樹教授(北大薬)の協力を得て大腸菌を用いた大量発現系によるNMR試料の調製を、また河野俊之チームリーダー(三菱化学生命研)の協力を得て4種(TRX、GST、GFP、MBP)の可溶化タグ融合蛋白質として小麦胚芽無細胞蛋白質合成系によるpHtrIIの大量調製を行い、溶液中やGel-phaseでの解析に最適なサンプル調製法を検討した。GSTタグは界面活性剤に対して不安定であり、膜蛋白質の構造解析には適していなかった。GFPタグやMBPタグは界面活性剤存在下においても安定であり、溶液中で比較的良好なスペクトルが得られることが分かった。今後はGFPタグやMBPタグを付加した蛋白質を樹脂担体へ安定に固定化する手法の開発を進める。
|