本研究はPASドメインを有するタンパク質の作用機構がPASドメインファミリーで保存されているのか、異なる機能を有するPASドメインタンパク質である、光受容タンパク質photoactive yellow protein(PYP)と光合成色素発現抑制因子PPSRとをもとに議論する。本年度は、16年度に発現系を構築して物理測定の評価に十分な試料量を確保したRhodobacter capsulatusのPYP(Rc-PYP)に関して、現在までに良く報告されているEctothiorhodospira halophila由来のPYP(Eh-PYP)との光反応の違いを赤外吸収測定や可視吸収測定、などから検討した。その結果、Eh-PYPと異なる可視吸収スペクトルを示すRc-PYPの吸収の違いが、発色団のプロトン化状態に依存していること、光吸収に伴う反応が発色団のtrans-cisの光異性化反応であることを明らかにした。このことは、配列依存性がPYP類似タンパク質としては、最も低く可視吸収も異なるPYPが同じ反応性を有することを示している。ただし、光反応後の準安定状態では、両者の状態が異なり、生物種間の相互作用反応における違いを生んでいることが考えられる。一方、PYPと異なるPASドメインタンパク質であるPPSRについては、その相互作用様式の決定のため相互作用タンパク質AppAとの相互作用系を構築して、分光学的な評価を行う系を作成した。AppAにおいては発現量の改善を行った。
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