研究概要 |
蛋白質には、熱力学的に最安定な天然状態だけではなく、準安定状態を含めた様々な非天然状態が共存し、それらは平衡で存在する。それら非天然状態の存在や状態間の揺らぎは、蛋白質の機能発現、安定性、凝集、寿命など多くの問題に重要な役割を果たしている。本年度は、それら非天然状態の凝集やアミロイド形成への関与に焦点を当てた研究を展開した。タンパク質の凝集・アミロイド形成は、天然構造形成と同様に、普遍的な現象であることがわかってきた。またこれは、プリオン病やアルツハイマー病をはじめとする"コンフォメーション病"の原因ともなっており、医学的見地からも重要である。 1.高圧NMR法を用いて、SS結合を除いたOSS lysozymeのアミロイドプロトフィラメントの高圧下での解離、および、常圧下での会合を、可逆的にコントロールし、直接観測することに成功した。これにより、アミロイドプロトフィラメントの形成は、部分モル体積の増加を伴う、熱力学的平衡へむかうゆっくりとした速度論的な過程であることを示した(Kamatari et al.,2005)。 2.これまでの凝集やアミロイドに関する研究結果を、準安定構造や構造形成中間状態の関与という視点から見直し、この重要性を総説にまとめた(印刷中)。 3.プリオンタンパク質は、医学的にも注目を集めており、また、アミロイド形成をすることが知られている。安定同位体標識した蛋白質を用いたNMR研究や変異体を用いた研究を展開するために、この蛋白質の発現系を構築した。
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