M期チェックポイントは、スピンドルと動原体(キネトコア)が正しく結合するまでM期中期から後期への細胞周期の進行を抑制する制御機構です。本研究では、「動原体の構成要素であるMis6-Sim4複合体がM期チェックポイント機構においてどのような役割を果たしているか」に焦点を当てて解析を進めてきました。昨年度までに、Mis6-Sim4機能が損なわれるとM期チェックポイント機構の構成因子であるMad2蛋白質が動原体に局在化出来なくなることを見出しました。本年度は、この点をさらに明確にするため、動原体あるいは紡錘体とMad2蛋白質を同時に蛍光標識・視覚化して、生細胞中でのそれらの挙動を観察しました。その結果、Mad2は、野生株細胞ではM期prometaphaseにおいて核膜から動原体、そして紡錘体(紡錘極体)へと局在を変化させますが、Mis6、Sim4変異体では核膜から動原体を経ずに紡錐体(紡錘極体)へと局在を変化させることを明らかにしました。さらに本年度は、Mis6複合体とMad2蛋白質の物理的相互作用についての可能性を検討しました。細胞内で過剰発現したMis6蛋白質の部分断片とMad2が免疫共沈するか否かを調べたところ、Mis6がそのN末領域を介してMad2と結合している可能性が示唆されました。この結果は、Mad2が動原体上に集積するためのプラットフォームとしてMis6複合体が機能している可能性を示唆しています。これらの成果を、他の研究プロジェクトより得られた成果とあわせてMolecular Biology of the Cell誌に公表しました。
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