Mrc1及びTof1は、出芽酵母においてS期での複製フォークの構成因子の一つで、複製チェックポイント因子として機能をもつことが知られている。前年度までにMrc1、Tof1に加え、新たにCsm3が、複製チェックポイント活性化時での複製フォーク進行の安定な停止に機能することと、これら3因子はin vivoで複合体を形成している可能性を示した。そこで、Mrc1、Tof1及びCsm3の組換えバキュロウイルスを作製し、それぞれのウイルスを感染させた昆虫細胞を用いて、組換えたんぱく質を発現、精製したところ、Mrc1、Tof1及びCsm3は、それぞれ相互作用し、複合体を形成することが明らかとなった。さらに、この複合体の詳細な機能や活性について解析を行なったところ、Tof1のN末側に複合体の形成やチェックポイントの活性化(Rad53のリン酸化)に必要なドメインが存在することやTof1自身がMrc1を介してRad53によりリン酸化されること、Tof1/Csm3複合体と相互作用する因子としてMcm2、Mcm3やDNAポリメラーゼalphaと相互作用するCtf4やDNA修復や再複製に関与するDpb11やChl1を見出した。また、Mrc1は、C末側に、Mcm6、Mcm7やMcm10と結合する領域、N末側にRad53の活性化に必要な領域が存在することを明らかにした。これらの結果から、Mrc1/Tof1/Csm3複合体は、チェックポイント活性化時にヘリカーゼを含む複製フォーク構成因子を制御し、複製フォーク進行の安定な停止させる機能を持つことに加え、さらにDNA修復や修復後の再複製に機能する可能性が考えられる。
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