研究概要 |
私は膜二回貫通型RINGフィンガータンパク質MARCH-II(membrane-associated RING-CH finger protein)を同定し,これが膜輸送・膜融合の調節因子であるSNAREタンパク質syntaxin6と直接結合することを免疫沈降法およびGST-pull down法により明らかにした。MARCH-IIの細胞内局在を間接蛍光抗体染色法により調べたところ,エンドゾーム膜上に局在し,syntaxin6と共存することを認めた。MARCH-IIを培養細胞に過剰発現させたところ,細胞表面とトランスゴルジ網(TGN)を循環することが知られているTGN38やfurinのTGNへの輸送が阻害され,MARCH-IIの存在する膜構造に集まることを認めた。このような阻害効果は,syntaxin6の膜貫通領域を欠失した変異体を発現させた際に観察されるものと同様であり,MARCH-IIの過剰発現がsyntaxin6の機能に影響を及ぼすことを示唆するものと考えられる。逆に,RNA干渉法によってMARCH-IIの発現を抑制したところ,部分的な効果ではあったがTGN38(またはTGN46)の局在や輸送に異常が認められた。以上の結果から,syntaxin 6と共にMARCH-IIがエンドゾームとTGNの間の膜輸送に関与することを示すことができた。また,MARCH-IIの細胞内C末端に存在する3個のアミノ酸配列がPDZドメイン結合モチーフであり,MARCH-IIの細胞内局在の決定に深く関わることを明らかにした。
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