研究概要 |
LRK-1はシナプス小胞蛋白質SNB-1(VAMP2の線虫ホモログ)のシナプス特異的な局在を制御する新規キナーゼである。今年度は、LRK-1によりその局在を制御されている蛋白質はSNB-1だけなのか、それとも他の因子もその局在を制御されているのかについて、いくつかの蛋白質の局在を調べることにより検証した。その結果、別のシナプス小胞蛋白質であるSNG-1(シナプトギリンの線虫ホモログ)も、SNB-1と同様にlrk-1変異体でその局在が異常になることが判明した。一方、シナプス小胞蛋白質以外の蛋白質の局在については、調べた限りではその局在は正常であった。このことから、LRK-1はシナプス小胞蛋白質に特異的に異常が生じると考えられる。 LRK-1にはアンキリンリピート、ロイシンリッチリピート、Ras-likeドメインおよびキナーゼドメインの4つの主なドメインが存在することがわかっている。今年度は、それらのうちRas-likeドメインがLRK-1によるシナプス小胞蛋白質の局在制御に必須であるかどうかについて検証した。具体的には、LRK-1遺伝子のRas-likeドメインに、活性化型および不活性化型変異をそれぞれ導入し、つぎにそれらを線虫lrk-1変異体に各々導入して、lrk-1変異体でみられるSMB-1の局在異常の表現型を抑圧するかどうか調べた。その結果、Ras-likeドメインに活性化型変異を導入したものは、野生型と同等か、それより強い表現型の抑圧活性を示したのに対し,不活性化型変異を導入したものでは、表現型を抑圧する活性は野生型と比べて減少した。従って、Ras-likeドメインは、活性化型になることによりLRK-1の機能を正に制御することが示唆された。
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