細胞接着や運動に関して、Rhoファミリーの低分子量G蛋白質の関与がこれまでにも数多く報告されている。最近Dock180に代表される、新しいタイプのRhoファミリーG蛋白質活性化因子(Dockファミリー)の存在が明らかになった。本研究では、我々が新しく見出したRhoG-Elmoを介したDock180の活性制御メカニズムが、インテグリンによる細胞の接着時における細胞膜の伸展や細胞の運動の制御に関与していることを明らかにした。またRhoG-Elmo-Dock180による細胞運動の制御は、これまで報告があった別のDock180結合蛋白質であるCrkを介したDock180の活性制御とは独立して起こることも明らかにした。一方、別のDockファミリー蛋白質であるDock4はがんの浸潤と深く関わっていること示唆されている。このDock4についてもDock180と同様、Elmoと結合し、細胞内で活性型RhoGとの三者複合体を形成することが確認された。さらに、Dock4はDock180と同様Rac1を活性化することがわかり、活性型RhoGとElmoの共発現によりその活性が促進されることが明らかになった。また、別のRhoファミリーG蛋白質であるRnd1の活性制御システムを研究している過程で、このRnd1がセマフォリン分子の受容体ファミリーの1つPlexin-B1と直接結合し、別のG蛋白質であるR-Rasの活性を負に制御することにより細胞の接着などを制御することを見出し、細胞膜受容体がG蛋白質の活性を直接制御するという、今までにない全く新しい情報伝達機構を発見した。
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