脂肪滴は真核細胞に普遍的に存在する細胞小器官であり、細胞内の脂質の貯蔵や代謝に重要な役割を果たしている。脂肪滴膜には多数のタンパク質が局在しており、特に哺乳動物細胞においては、PATドメインファミリーと呼ばれるタンパク質群が存在している。我々はこれまでに脂肪滴に局在する機能タンパク質としてCGI-58を同定し、これがPATドメインファミリーの1つペリリピンと相互作用することを見出した。CGI-58は、中性脂肪蓄積症であるChanarin-Dorfman症候群(CDS)の原因遺伝子として報告されていることからも、生体内で脂質代謝に関与していることが示唆される。我々は前年度までにCGI-58の組織分布、細胞内分布、さらにCDSの発症の分子メカニズムについて研究を行ってきた。しかし、CGI-58の脂肪滴における役割については未だ不明である。本研究では、CGI-58の生理的機能の解明を目的として、まずRNAiによりCGI-58をノックダウンしたときの脂肪滴への影響について検討した。分化前の3T3-L1細胞において、CGI-58ノックダウンにより脂肪滴の顕著な肥大化が確認された。RNAiは3T3-L1細胞の脂肪細胞分化には影響を与えなかった。しかし、RNAi細胞では、脂肪分解活性が顕著に低下していることがわかった。また、肝臓癌細胞であるHepa1においても、CGI-58ノックダウンにより脂肪滴の顕著な肥大化が確認された。次に、in vitroの実験系で、CGI-58のリパーゼ活性について検討したが、それ自身にはリパーゼ活性は認められなかった。しかし、脂肪細胞のリパーゼであるATGLやHSLとCGI-58を混合すると、リパーゼ単独の場合に比べ、脂肪分解活性が上昇することを見出した。よってCGI-58は細胞内でこれらのリパーゼと協調して脂肪分解を促進する働きを有することが示唆される。
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