所属研究室において共同研究として行ってきた分裂酵母のlocalizome(全遺伝子産物の細胞内局在決定)がほぼ完了し、局在情報のデータベース化および集計・比較解析もほぼ終了するに至った。約5000の分裂酵母遺伝子産物のうち、これまでに局在報告があるものは20%に満たなかったのであるが、本研究ではさらに70%以上の遺伝子産物について新たに局在を明らかにした。また局在観察を単純に網羅的に行うに留まらず、共局在観察や遺伝子産物の発現レベル調節を取り入れた観察を集中して行ってきたため、さらなる詳細情報を追加することができた。本データベースは、タンパク質局在変化の解析に広く応用できるものと思われる。 SUMO(small ubiquitin-related modifier)は低分子量の翻訳後修飾タンパク質であり、標的タンパク質と共有結合することにより、そのタンパク質の局在や機能を制御していると考えられている。分裂酵母のSUMO、SUMO化酵素および脱SUMO化酵素欠損株を作成し表現型観察を行った結果、DNA合成・修復、核分裂、細胞壁形成、核-細胞質間輸送にSUMO化が関与していることが確認された。また分裂酵母において、SUMOは核、核内ドットおよび動物細胞の中心体に相当するspindle pole body(SPB)に局在する。Localizomeにより、約500の遺伝子産物が核、約260が核内ドット、約160がSPBに局在することが分かった。これらの遺伝子産物のSUMO化・脱SUMO化欠損株における局在異常を解析し、さらにSUMOの標的であるかどうかを検討することにより、SUMO化タンパク質の局在変化を介した、様々な細胞内過程の調節機構を包括的に理解することが可能であると思われる。
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