研究概要 |
私は、7回膜貫通型カドヘリンFlamingo(Fmi)が個体の発生過程を通じて多面的かつ必須の役割を果たしていることを明らかにしてきた。上皮組織では平面内細胞極性(planar cell polarity, PCP)の形成に必須であり、神経組織では個々のニューロンが持つ樹状突起と軸索双方の伸長パターン形成に重要である。しかし、現時点ではFmiの下流シグナルの実体はほとんど解明されていない。今年度は、Fmiと直接相互作用する候補分子群の同定と、それらの生体内での機能解析を進めた。 Fmiの分子内ドメインについての構造-機能解析の過程で、カルボキシル末端を含む細胞内領域(C-tail)にミリストイル化シグナルを付加した改変分子に注目した。この改変分子をショウジョウバエ成虫の光受容細胞で発現誘導すると、顕著な投射パターン異常を示す。このことは、C-tailには未知の細胞質タンパク質が相互作用しており、軸索伸長パターンを調節するシグナルを媒介していることを示唆している。そこで私は、C-tailをbaitにしたyeast two-hybridスクリーニングをおこなった。その結果、dTestinとdCed-12を含む候補分子群を分離できた。dTestinは、タンパク質問相互作用に関わるLIMドメインを3つ有する分子であり、PCP形成に必要な分子Prickled(Pk)と高い相同性を示すが、機能は未知である。dCed-12は、C.elegans CED-12のオルソログであり、DOCK-180などと相互作用して細胞内のアクチン骨格系の動態を制御することが知られている。dTestinは上皮組織で広く発現しており、dCed-12は中枢および末梢神経細胞で発現が確認できた。現在、これらの候補分子群について、RNAi法による遺伝子ノックダウンによる影響を検討しているところである。
|