研究概要 |
マウス成体においてES細胞のように多分化能を持つ万能幹細胞が存在するのかどうかを検討する目的で、胎仔期の未分化細胞に特異的に発現するOct-3/4およびRex-1遺伝子を発現する細胞が成体組織内に存在するか否かを調べる試みを行った。Oct-3/4遺伝子座に蛍光タンパク質であるEGFPの遺伝子を組み換え挿入したマウスの主要な臓器において、EGFP陽性細胞をFACSにより観察した結果、EGFP陽性細胞は精巣以外の臓器には全く認められなかった。この結果から、Verfaillieらの樹立した成体幹細胞(MAPC ; Jiang et al.,Nature. 2002)は、体性幹細胞等の比較的未分化な体細胞が脱分化してOct-3/4を発現する細胞へと形質転換した結果現れた、ある培養条件下でのみ出現可能な細胞であると結論付けられる。我々は引き続きRex-1遺伝子座にEGFP遺伝子を挿入したES細胞を樹立し、組織内に存在するRex-1の発現細胞を検出出来るマウスの作成を目指した。Rex-1遺伝子座組み替えES細胞でのキメラ形成は成功したものの、残念ながらgerm line transmissionが起こらず、Rex-1遺伝子発現をレポーティング出来るマウス系統の作成には至らなかった。またVerfaillieらの発表した方法に従い、マウス骨髄細胞からのMAPCの樹立を試みたが成功しなかった。彼女らの方法に従ってマウスMAPCを樹立出来たという研究室は今のところ無く、公開されている情報だけで他の研究室でMAPCの樹立を再現することは不可能なのではと推測される。
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