北オーストラリアEast Alligator川の雄株とインドネシアLombok島の雌株間で再度交雑させた場合、やはりF_1胞子体は無性生殖化し、再現性が確認された。北オーストラリアおよびインドネシアに生育する他の有性生殖株を用いて交配実験を行ったところ、北オーストラリアEast Alligator川の雄株と交雑したインドネシアLombok島の別株とBali島の2株が、無性生殖化したF_1胞子体を形成した。リボソームITS領域のSingle Strand Conformation Polymorphisms(SSCP)について解析を行ったところ、無性生殖化したF_1胞子体を形成したインドネシア株はすべて同一の泳動パターンを示した。また、得られた無性生殖株はヘテロ接合体であることが確認された。無性生殖化したF_1胞子体から放出された胞子の発芽率を調べたところ、調べた48個体中41個体が10%以下と低い発芽率を示したが、2個体は50%を越える発芽率を示し、集団を維持するだけの繁殖力があることが示唆された。 遺伝的に分化した有性生殖集団間の交雑による無性生殖化が自然界でも起こっているとすれば、天然で単離された無性生殖株は遺伝的にヘテロ接合体となっているはずである。そこで、世界各地から単離されたC. leprieuriiおよびC. vieillardiiの無性生殖株についてSSCP解析を行ったところ、アデレード、フロリダ、サウスカロライナ、ギアナ、クックタウン(オーストラリア)の無性生殖株がヘテロ接合体のパターンを示した。以上の結果から、本藻類群の無性生殖化現象は、有性生殖集団間の交雑によって誘導されている可能性が高いと考えられる。
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