研究概要 |
ヤマトシロアリ・コウシュンシロアリ・オオシロアリのESTライブラリーより抽出されたセルラーゼ遺伝子の解析を続けると共に、キゴキブリ及びムカシシロアリより1000クローンのESTの取得とセルラーゼ遺伝子の抽出を行った。得られたセルラーゼ遺伝子候補配列をFASTXにて解析した結果、前年度に得られたものと同様のGHF5,7,10,11,45より成る一定の糖質加水分解酵素群(GHFs)が、全てのシロアリ及びその関連昆虫の共生系内で共通して発現している可能性が明らかとなった。 前年度と同様の分子系統学的な解析の結果、GHF5,10および11に関して、取得された原生生物由来のGHFsホモログ配列が、バクテリアの同遺伝子のクラスターの内部に位置するという現象が再確認された。このことは、これらの3種の遺伝子が、バクテリアより水平伝播してきた可能性を強く示唆する。また、その伝搬時期はこれらのシロアリと共生原生生物間の共生関係が結ばれた、極めて初期の段階である可能性が強く示唆された。 現在、各遺伝子の全長の取得及び、本年度後半より開始された他プロジェクトにて進めているESTの大量配列決定の結果から得られる情報をも加味し、下等シロアリ共生系における遺伝子のフレキシブルな交換・進化の道筋を詳細な分子系統学的解析よってに明らかとし、最終年度である平成18年度中に結果の総括を行う。なお、現在、17年度までの結果については論文投稿準備中である。
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