本研究は、大豆においてフラボノイド水酸化酵素(F3'H)の機能により抗酸化能を有するフラボノイド色素が産生されること、また、抗酸化性フラボノイドが開花期の低温ストレスにより産生される活性酸素から植物組織を防御することを明らかにすることを目的としている。今年度は、F3'H遺伝子の発現が特に顕著な未熟珠皮と胎座について、F3'H遺伝子が機能する系統(To7B)と機能しない系統(To7G)を用いてフラボノイドを染色する色素(ジフェニルホウ酸2-アミノエチルエステル(DPBA))で組織染色した。結果、両系統の珠皮では染色による蛍光色に違いがあることが明らかとなり、両者で異なる種類のフラボノイド色素が蓄積していることが示唆された。また、両系統の組織抽出物の抗酸化能をDPPHラジカル消去アッセイにより評価し、To7Bの組織抽出物のほうがTo7Gのものより抗酸化能が高いことを明らかにした。よって、これらの結果からF3'H遺伝子が抗酸化性フラボノイドの産生に関与することが示唆された。また、免疫電子顕微鏡法により、F3'H遺伝子の発現部位をさらに詳細に観察し、タンパク質が珠皮のへそ側および胎座の細胞の色素胞に局在することを明らかにした。さらに、F3'H遺伝子が機能しない大豆品種JackにF3'H遺伝子のプロモーター部とF3' HcDNAをつないだ配列を組み込んだ形質転換用ベクターを導入し、組み換え固体を得、T1種子を得た。
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